『ブログ 社員教育講師』

皆さんこんにちは!『寺子屋ラッキー』と申します。職場生活で多少なりともお役に立つと思える事柄を、人を中心に申し上げていきます。よろしければお付き合いください。

『社員教育』 (69) 「人は誰しも 建前と本音の狭間で 生きている」

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 こんにちは。コロナの終息は中々先が見えませんが、インフルエンザの予防接種はお済ですか?


 さて、あなたは靴を履くときに左右どちらからですか。家を出る時はどちらの足からでしょう? おそらく上着を着る時と同じく無意識のうちに習慣化していることと思えます。
 マネジメントの仕方だけでなく、大勢を前にした話し方での態度(表情・姿勢・動作)に見られるようにどなたにも癖があります。それだけに「悪癖」を治すとなると注意されないと簡単にはいきません。とにかく、何事も意識しないと分からないものです。


 例えば、あなたのお宅には時刻の分かる類の物が幾つあるか訊かれて即答できますか? 
 時計だけでなく、パソコン右下に時刻表示されると同じくテレビ・電子レンジなどの家電製品にも表示される。そのためトイレだけでなく浴室内でも時刻は分かる。
 もしもオークションに入札し入浴したとしても、終了時刻前に余裕をもって風呂から上がり楽しみを継続することができる。二度と戻らない時間は有効に使いたいものです。


 次の話は、家庭への掛け時計が普及し始めた明治時代中期以降のことです。
 『坊ちゃん』で夙(つと)に知られる、現在の都内文京区にあった夏目漱石の居宅へ知人が訪ねて来た。漱石が歓待したこともあり話が弾み、居心地が良くなった客はついつい長居していた。
 その間、お手伝いさんは酒・料理を運び水菓子・茶も出し終えていた。テレビはおろかラジオも無い当時のことである。いつご主人から呼ばれるか分からない。
 日本全体が貧しかった頃の寒村から上京したが〝ご主人〟に恵まれた。三食付きの部屋付きで、世間相場より高いお給金を毎月キチンと頂ける身である。与えられた部屋へ戻って休んだら罰が当たる。
 薄暗い台所で小さな卓袱台(ちゃぶだい)に両肘をついて居眠りを堪(こら)えていた。時折り楽しそうな笑い声が漏れてきたが、話の内容より正直客が帰るのをひたすら待っていた。


 酒・料理だけでなく漱石との話にも〝満足〟した客がそろそろお暇(いとま)しようと腰を上げ、漱石に時間を聞いた。漱石が奥の部屋から「お~いお花! 今何時かな?」と大きな声でお手伝いさんに訊いた。今や遅しと待ち受けていた彼女は「ハ~イ もう12時で~す!」とこれまた大きな声で返事した。


 来客を送り出した後、漱石は直ぐにお手伝いさんを居間へ呼んだ。
「今日は遅くまでご苦労だった。だけどな、さっき私がお前に時間を訊いた時、『もう12時です』と言ったよな。あれではいけないね。お客さんには追い立てられるように聞こえ失礼なんだよ。せっかく料理でもてなしたお前の努力が無駄になる。
 ああいう場合はネ、『未だ12時です』と言うもんだよ。若いが利口なお花のことだ。今後気を付けなさい。
 疲れただろう? さーッ風呂へ入って寝なさい。明日からも頼んだよ」と、優しく教え諭したと思える話が残っている。


 注意の仕方に犬猫の躾(しつけ)を例えに出すのが相応しいとは思えない。しかし、その場その時を捉えタイミング良くお手伝いさんへ注意した漱石のやり方は、OJTの考え方に叶っているといえるでしょう。


 その後も何か気が付くと漱石はこまめに彼女を指導した。教えを受けたお手伝いさんは当時のことである。尋常小学校へ行ったことは全くなかった。それでも数年後お暇(いとま)を頂く時には高等女学校卒に負けないだけの『教養』が身に付き幸せな結婚生活を送ったと、戦後芥川賞にノミネートされ太宰治と交友があったという恩師からお聞きした覚えがある。(以下「話し方研修」に移し続く)


 では、土・日は二カ月ぶりに晴れ間が覗くようです。秋空のもと紅葉狩りなどで良い週末をお過ごし下さい。情報洪水の中をお越し頂きありがとうございました。



❒ 社員教育講師『人材教育研究所』 (「過去と未来は『鉄の扉』。変えられる未来に向かって挑戦しよう ‼」)