『管理者教育』 (145) 「褒めるのは 叱ることより難しい」 (その1)
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こんにちは。歴史上「叱り上手の清水の次郎長」に対し「褒め上手の加藤清正」と聞いたことがあります。その点「部下は褒めて叱って育てよう」は陳腐な言葉ですが、その実際となると中々難しいことです。
人は誰しも自分を認めて欲しいと言う「認識欲求」を<本能的>に持っています。例外だという人は少ないように思えます。
褒める対象は、相手の性格(行為)、能力(仕事)、趣味(特技)、身だしなみ(服装)だけでなく、家族・住居をはじめとする生活環境、ときにはペット・コレクションといった所有物などが含まれる。褒め言葉を使うときの留意点は次の五ポイントです。
第一は、具体的に褒めること。
よく口癖のように漠然と「立派ですね」、「素敵ですね」、「凄いですね」という人がいるが、こうした抽象的言葉には心がこもっておらず、言われてもテンデ分からない。具体的にハッキリとどこがどんな風に良いのか、認めた長所・美点を褒めることです。
例えば部下が「班長、任せてもらった汎用旋盤ですが、教えて頂いたとおりにやったら、何とかオシャカを出さずに操作出来るようになりました。ありがとうございました!」と、喜び勇んで報告してきたとする。
「そうか。あの機械は知ってのとおりチョット癖があってな。俺はあれを使いこなすのに1
ケ月近くかかったかな・・・? その点、松木は器用というか覚えが早いな。次はその上のマシンに挑戦だ。これからも安全に気をつけて、この調子で頼むぜ。期待しているからな!」と言われれば部下はたとえ火の中水の中、これが跳ねずに済まさりょかと、ヤル木(気)に火が付きさらにモラールアップするように思えます。
ところがまともに受けて「そうか上手くいくようになったか。だがな松木。この際だからハッキリ言っておくがね。技能を早期習得できたのは私の教え方が良かったからであって、自分の能力に自惚れてチャこの先伸びんぞ。いいね! 分かったら仕事に戻りなさい」では、部下はヤル気に水を差されたようでガックリする。
第二は、あまり目立たない美点を褒めること。
皆が褒めていることをオーム返しのように同じ言葉で褒めるのでは能が無い。「この人、また同じことを言ってやがる。もっと他にいうことないのかよ。ヨイショしようたってそうはいかないぞ」と本人は構えてしまう。
例えば「佐藤君、残業がなくなったんで最近スポーツジムへ通っているそうだね。その
せいか一時に比べだいぶスリムになって精悍な顔立ちになってきたな」と言われれば悪い気はしないものです。
三島由紀夫の「不道徳教育講座」にフランス陸軍のお世辞嫌いの将軍が出てくる。ある時手入れの行き届いている立派なカイゼル髭を側近が事実に基づき心から褒めた。その時難しい顔の閣下がそれまで見せたことの無い満面の笑みを浮かべる件(くだり)がある。それと同じく誰もが気づいている長所を褒めるよりは、本人がひそかに認めてもらいたがっていることを見つけることです。
欲を言えば誰もが気付かず、たとえ小さなことでも本人も自覚していない点を褒めた方が褒め方の効果は上がるでしょう。そのためには、日頃から部下を注意深く「観察」していなければ褒め言葉は使えません。
今回はここまでとします。ありがとうございました。
❒ 管理者教育講師『人材教育研究所』 (「過去と未来は『鉄の扉』。変えられる未来に向かって挑戦しよう ‼」)